自己否定のモメント

話題になっているようだが

 「引きこもり」となる原因は「就職や就労での挫折」が最多で、30〜34歳の年齢層が最も多いことが東京都が行った実態調査で分かった。本人の心理や意識にも踏み込んだ引きこもりの公的な調査は全国初。不登校など学校時代の体験をきっかけとし、若年層が多いとされる従来の見方とは異なる傾向が浮かんだ。

 調査は、都内に住む15〜34歳の男女3000人を住民基本台帳から無作為抽出し、昨年9〜10月に個別に訪問。1388人から協力を得た。うち10人を引きこもりと判断し、別途調査した18人を加えて計28人を分析対象とした。

まず調査手法的には、1000人中10人は「誤差の範囲」で、しかも別途調査したデータを入れて「ひきこもりは30代前半が多数」というのはさすがに恣意的な誘導と言われても仕方がない。むろん、そういったことを突っ込んだとしても、経験的にはそれで正しいのだろうなとも思う。調査というのは、そういった調査設計段階での「カン」の導入によって、それなりに意味のあるものになったりもする。ネットでデータがどうのとか言うのが好きな連中に足りないのは、この種の実地で生まれる経験。ま、あれだって統計の名を借りた俗流社会論であり、ポリティカル・ディスコースなのだからと思って割引いて考えるのが吉。

ところで、

それとは別に気になるのが、記事に対する反応。一方に「自分たちは社会の中で求められていない存在ですよねそうですよね死んでいいですかっていうか死ねばいいんですよね僕なんか」的な自己否定の契機があり、他方でその自己否定そのものが他者から与えられる「バッシング」のせいで生まれているという(ときに過剰な)被害者感情がある。赤木問題や俗流若者論批判の根幹にあるのはそうしたモメントだと思うし、部外者から見てそれがときに迷惑な言いがかりであり、どれだけ幼稚な振る舞いに見えようと、そこには一定の妥当性がある。

そうは言っても、社会の側には「彼らに応答する責務はない」と感じられているのも確かなのだろうけれど。